伝わる文章は相手のことを考えて書くことが大切
こんにちは。講師の古市です。今回は「伝わる文章」について考えてみましょう。
「伝わる文章」ってどんな文章でしょうか。「伝わる」というからには伝えたい相手がいるはずですね。伝えたい相手に伝えたい内容を正しく届けることができる文章が「伝わる文章」なのです。
文章を書くときには、この「読み手」と「内容」の2点を頭に置くことが大事です。読み手は自分と同じ知識・バックグラウンドを持っていると考え、「このぐらいは分かる・知っているだろう」で文章を書きがちです。また、企業やグループ内で使っている用語を無意識のうちに使ってしまうこともあります。
いくら正しく書かれた文章であっても、それが専門的すぎる内容で、相手がその分野に詳しくないとどうなるでしょう。きっと、なにを言っているのかわからず、相手には届きませんね。読み手の年齢や知識が自分と違うということを常に頭に置いて、相手に伝わるようにしなければなりません。
伝えたい相手の現状と背景や知識を考慮する
次の文章を読んでみましょう。
消費税が8%なので、年度末に生活用品をまとめ買いした。
この文章から書き手の行動原理が理解できるでしょうか? 実際、消費税が8%であることと、年度末に生活用品をまとめ買いすることの間には何か関連性はありません。
仮に、この文章が消費税率が8%へと引き上げられた2014年の春先ごろに書かれたもので、読み手も同時期に読んでいるとすれば、この文章のままでも理解されることでしょう。
読み手と書き手の間に「消費税率引き上げ」という共通認識があるため、読み手は「ああ、8%に上がる前の年度末に、生活用品をまとめ買いしたんだな」と受け止めることができます。
しかし、2019年になった今読んでみるとどうでしょう。既に消費税は8%で定着しています。さらなる引き上げも控えています。この状態と「年度末に生活用品をまとめ買いする」行動の間に関連性を見いだすことはできません。
したがって、読み手に伝わるためには、以下の文章のように求められます。
消費税が8%に引き上げられることに備え、切り替え前の年度末に生活用品をまとめて購入した。
例はひとつに過ぎませんが、読み手との共通認識がどの程度かを考慮しながら書くことで、誤解や曲解を減らし、伝わりやすい文章にできるでしょう。
文章の書き方で稚拙な印象を与えてしまう
次に内容についてです。みなさんは稚拙な印象を受けるような文章に出会ったことはないでしょうか。
企画の詳細をうかがい、私的には非常に素晴らしい取り組みと感じました。
これからの進展がとっても楽しみですね。
ビジネスの現場においてこの文をメールで受け取ったとき、どのように思われるでしょうか。
一見すると言葉づかいは丁寧で問題がないように見えます。しかし、「私的には」や「とっても」といった話し言葉が混じっているため、丁寧な言葉づかいとのミスマッチで稚拙な印象を与えてしまいます。
また、書き手がビジネスパーソンとして未熟であるというようにも取られかねません。
企画の詳細をうかがい、取り組みの目的・方法に感銘を受けました。
今後の進展、大いに期待しております。
稚拙な印象を与えてしまわないよう気をつけたいポイントのもう1つは、敬語です。以下の文章を見てみましょう。
ご依頼の資料を早急にご送付くださり、心より感謝申し上げます。
本日、拝受させていただきました。
これを読んで違和感を覚えませんか? 違和感の原因は2カ所あります。わかりますでしょうか?
丁寧語の扱い
1つは「ご依頼」ですね。資料を送付していただいたということは、依頼したのは自分ということになります。自分が依頼し、相手が送付したというそれぞれの動作に対し、どちらにも丁寧語・美化語である「ご」をつけています。自分の動作に対して「ご依頼」はおかしいですよね。この場合は謙譲語を使い「依頼申しあげる」となります。
謙譲語の扱い
もう1つは「拝受」です。こちらは謙譲語ですが、加えて「させていただきました」と続いています。過剰な敬語は慇懃無礼な感じを与えます。
このように敬語を正しく使えないのも、稚拙な印象を与えがちです。自分の動作に対しては謙譲表現、相手の動作に対しては尊敬表現を正しく用いるようにしましょう。また、よくわからない表現をそのまま使うのではなく、用例を調べて用いることが大切です。
使い慣れていない表現を下手に使うよりは、ていねいに書くだけでも十分です。
テキスト文章を意識して!
普段の会話や親しい間でのメッセージのやりとりでは、つい話し言葉を使う・敬語の使い方がおかしいとしても問題はありません。しかし、ビジネスメールや公的な文章において、こういった表現は受け手に対して与える印象を考えると避けるべきです。今回は受け手との前提条件の共有や文章が与える印象について考えてみました。
この記事を書いた人
古市 威志
Mac専門誌、技術系出版社の編集者を経て、現在は外資企業のネットワーク管理者、テクニカルライター&編集者、パソコン教室・こども将棋教室講師の3足のわらじを履く。 編集者としてWordPressやMac, iPhone/iPadなどの書籍を数多く担当・執筆。ライターとしてもEvernoteやiPhone/iPad関連書籍などの紙媒体から、Web上のICT用語集までジャンルを問わず幅広く執筆している。Macは30年来、iPhoneも最初期からのユーザー。著書に『Scratchではじめる ときめきプログラミング』『EVERNOTE Perfect GuideBook [改訂第2版]』がある。